福岡高等裁判所 昭和24年(つ)712号 判決 1950年3月30日
被告人
原口五郞
外一名
主文
本件控訴を棄却する。
当審における未決勾留日数中被告人原口五郞に対し二百二十日を、被告人木下敏雄に対し二十日を夫々其の本刑に算入する。
当審に於ける訴訟費用は被告人等両名の連帯負担とする。
理由
弁護人吉野作馬控訴趣意の第一点について、
成る程所論の如く原判決書の冒頭被告人を表示するに「原口三郞」と記載されているが、該判決書中の事実理由の記載部分及び法令適用記載部分を見ると、何れも被告人原口五郞として表示されているのみならず、本件訴訟記録全般を通読すると起訴された者従つて裁判を受ける者は原口五郞であることが明白であるから原判決書冒頭被告人の表示として「原口三郞」と記載してあるのは「原口五郞」の誤記であることが明瞭に看取できる。そして氏名の誤記があつてもその者の年齢、職業、住居、本籍、罪名、裁判の宣告をした年月日及び裁判所に依つて同一人であることが判別できる以上(本件の場合も右の諸事項の対照により原判決書冒頭に「原口三郞」と表示されておるに拘らず裁判の執行を受くる者は現前の「原口五郞」であることを判別できる)裁判の執行に支障はないから之を以つて直に訴訟手続法上の違背且つ証拠とのくいちがいがあるとは云えない。かかる瑕疵あることのみでは原判決を破毀するに足らないので論旨は採用しない。